【電気電子回路】クランプ回路の原理と用途:ダイオードで過電圧や静電気からICを保護

クランプ回路とは、ピーククリッパ(ピーククリップ)とベースクリッパ(ベースクリップ)という2つのクリッパ回路を使って、Arduino や Rasberry PIといったマイコン(とは言わないか)や CPU、IC を過電圧や静電気から守る回路の一つ。


上のクランプ回路は、Arduino に入力される信号が 0~Vcc に収まるように制限する回路。

もしあなたが、ArudinoやRasberry PI を使ってセンサから信号を入力し、モーターを動かしたりするような装置・システムを作りたい、作る必要があるときには、この保護回路を理解・設計できることは非常に重要。

そこでこの記事では、クランプ回路の基本となるクリップ回路から初めて、読み終わる頃にはあなたがクランプ回路の原理と用途、そして用途に合わせ、自分自身でクランプ回路を設計できるように、解説していく。

もし、あなたがまだダイオード回路を十分理解できていなかったり、この記事を読んでる途中で「?」となったときには、以下の記事が役に立つので、こちらも参考にしてほしい。

この記事があなたのクランプ回路の理解と、回路設計のお役に立つことを願っている。

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ダイオード駆使の保護回路

クランプ回路の動作を理解してもらうために、単純な回路の動作から順に説明する。

そして、回路がどのように動作するか、電流がどのように流れるかを推定するときのやり方は、

  1. ダイオードに順方向に電圧が流れたら?」と仮定する
  2. その仮定に従って、電流の流れる方向、各点の電位を求める
  3. 電流の方向、電位に矛盾が無ければ、1の仮定は正しい=ダイオードに電流が流れると判断する
  4. 矛盾があれば、1の仮定は間違い=ダイオードの順方向には電流は流れないと判断する

おさらい

前記事、前々記事で何度も繰り返してくどいかもしれないが、本当に重要なことなので再度繰り返す。ダイオードの大原則

ダイオードに(順方向に)電流が流れるときには、ダイオード両端の電圧(電位差)は必ず 0.6~0.7V

ピーククリップ回路

では問題。次のような回路に±10Vの正弦波を入力したとき、出力電圧波形はどうなるか?ダイオードの順方向電圧降下 VF は 0.6V とする。

考え方

±10Vの正弦波の波形を一度で考えようとすると複雑なので、まず 10Vの直流電源を接続し、出力端子もとっぱらって、B点の電位がどうなるかを考えてみよう。

直流電源が2つあり、時計回りに流れるか、反時計回りに流れるかは2つの電源の強さ(=電圧)で決まりそうである。で、2つの電源の電圧を比べると、左側が 10V だから、時計回りに流れそうである。

もし想像通り時計回りに電流が流れると仮定したら、ダイオードにも順方向に電流が流れる。

すると、ダイオードのカソード側の電位は 5.0V なので、ダイオードのアノード側の電位 (=B点の電位) は、ダイオードの大原則に従い、5.0 + 0.6 = 5.6V となる。そして各点の電位は下図のようになる。

回路に流れる電流値は抵抗の大きさによって変わるが、電流が時計回りに流れることは間違いなさそう。したがって、ダイオードの大原則に従い、この 5.6V は電流値によらず一定。

さらに、電源電圧が 8Vでも 6Vでも同じように考えると、10V のときと同じ電位 5+0.6 = 5.6V に固定されることが分かるだろう。この状態は電源電圧が 5.6V まで下がってもずっと同じ。

次に、左側電源が 4V のときを考える。すると、右側電源のほうが電圧が高いから反時計周りに…と考えたいところだが、反時計回りの流れにはダイオードが「でーん」と待ち構えて流れさせてくれない。

すると、回路的にはダイオードの所で回路が断絶(ダイオードが存在しない)のと同じことになる。

すると、B点の電位は 4V、つまり電源電圧と等しくなる。

同様の考えを +10~-10V で行うと、結果、B点の電位=出力される電圧波形は次の赤線のようになる。

  • 電源電圧が +5.6Vより高いときは、出力は+5.6Vで固定
  • 電源電圧が +5.6Vより低いときは、出力は電源電圧に等しい

ベースクリップ回路

それでは、ピーククリップ回路とは電源とダイオードの向きが逆になったベースクリップ回路に±10Vの正弦波を入力したときはどうなるか?

考え方はピーククリップ回路とまったく同じ。+10~-10Vの直流電源を入力端子に接続したときに電位がどうなって、どのように電流が流れるかを確認する。

例えば -10V のときはこちら(直流電源なので、-10Vは+10Vの電源の向きを反対にしている)。

さっきと同じように、ダイオードの順方向=反時計回りに電流が流れると仮定すると、B点の電位は -4.6V となる。すると抵抗→左側電源にも反時計回りに電流が流れることができ、電流の流れに矛盾はないので、仮定は間違っていないことが分かる。

この電流の流れは、電源電圧が -10~-4.6V のときまで続き、この間ではB点電位は -4.6V固定である。

そして、-4.5V になると…

さっきと同じようにダイオードに順方向に電流が流れると仮定すると、B点の電位は -4.6V

一方、抵抗の左側電位は -4.5Vになるから、電流は右向きに…とは流れてはくれなさそう。つまり仮定が間違えている。

というわけで、この場合はダイオードには順方向に電流が流れないから、ダイオード(+4V電源)が接続されていないと同じ。

この状態は、抵抗の左側電位がB点の電位よりも高くなる -4.6~+10V で同じ。

以上をまとめると、ベースクリップ回路に ±10V の正弦波を入力すると、次のように低い電圧がカットされる。

リミタ回路

それでは、次の回路の出力波形はどうなるか?

回路をよーく見ると、左側の「ダイオード+電源」部分はピーククリップ回路と同じ、そして右側の「ダイオード+電源」部分はベースクリップ回路と同じ

2つの回路が並列に接続されているということは、出力波形は次図のようになることが推測できるだろう。

言葉で言うと、

  • 入力電圧 > +5.6V のとき、出力電圧は +5.6V固定 (ピーククリップ回路の働き)
  • 入力電圧 = -4.6~+5.6V のとき、出力電圧=入力電圧
  • 入力電圧 < -4.6V のとき、出力電圧は -4.6V固定 (ベースクリップ回路の働き)

クランプ回路

それでは本記事の真打ち、クランプ回路について。

と、その前に、先ほどのリミタ回路を思い出してほしい。このリミタ回路のピーククリップ回路と同じ左部分のダイオードと電源を

矢印のように位置を変えてみると…

この回路図とまったく同じ回路だということが分かると思う。

そして、さらに2つの電源について、「5V」を「Vcc」と書き換え、「4V」の電圧を「0V = GND」に変えると、次のようになるのは問題ないだろう。

じつは、これがクランプ回路なのである。つまり、クランプ回路とは、リミタ回路であって、特定の電圧条件下で動作させる回路と言える。

だから当然、±10V の正弦波を入力すると、出力波形は次のようになる。

クランプ回路の保護機能

このクランプ回路を Arduinoの入力ピンにつなげると、このようになる。

このクランプ回路、どのような働きをするかというと、通常、入力端子に入力される電圧は 0~Vcc の範囲である。

が、何かしらの異常により入力端子に過電圧が入力されたり、静電気が発生した場合、もしクランプ回路がなければ、その異常電圧がそのまま Arduinoの入力ピンに伝わり、Arduinoが異常動作したり、最悪の場合、破壊することもある。

しかし、入力端子の入力ピンの間にクランプ回路を接続することで、入力端子に異常電圧が入り込んでも、入力ピンの電圧はクランプ回路の動作によって (Vcc+0.6)~-0.6V の範囲内に抑えられる。

これがクランプ回路の保護機能である。

まとめ

クランプ回路の動作原理は、ダイオードの2つの重要性質

  • 整流作用
  • 順方向電圧降下は 0.6V

を使って説明できる。

この回路によって、過電圧や静電気から Arduino や IC を保護することが可能である。

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