電気電子系を始め、理系の実験レポートや卒業論文では、実験結果を示すためにグラフ、表をたくさん作成する。このグラフと表は、レポート採点時の減点や、卒論審査でチェック(修正・書き直し指示)がけっこう入りやすい。
このため、あなたが早めに「減点されない、チェックが入らない書き方」を身に付けておくと、学生実験での好成績、卒論提出後の直し無しが期待できる。
そこで、好成績ゲット&卒論修正無し状態をあなたに手に入れてもらうために、グラフ・表の書き方について、4つのコツをお伝えしようと思う。
- 図表のタイトル(キャプション)
- 軸タイトルと目盛り
- 凡例
- 図表番号の呼び出し
言葉で表現すると短いが、あなたにコツを身に付けてもらうために、一つのコツを一記事で解説する。
コツの一つ一つは特段難しいことはない。ぜひ早めにコツを身に付けて、あなたのレポート作成や卒論作成に役立てて欲しい。
ちなみに、理想的なグラフ・表の目標は
本文を一切読まなくてもレポートタイトルとグラフ・表を見ただけで、どんな実験をしたのかが想像できる
図表のタイトル(キャプション)の付け方
タイトル(キャプション)を付けるときのやり方は、あなたの目標レベルによって3つくらいに分けれる。
- 簡単&減点されにくい → そのままコピペ
- 減点されない → 変化条件と測定項目を明確に
- 目指せ!プラス評価 → 実験内容・条件が理解できる
実験とグラフ
以下に、学生実験の実験内容と、その実験を行って●●君が作成したグラフを示す(記事作成に協力してくれた●●君に感謝)。
実験項目(3)
三相インバータを用いて出力周波数を変化させ、誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係を調べ、表・グラフにまとめよ。またIMの回転数と周波数の関係を調べたグラフより下式の関係を確認せよ。使用モータの極数 P は 4 である。
●●君のレポート
6.実験結果3)
誘導電動機の回転数と周波数の実験結果
表2 誘導電動機の回転数と周波数の関係
※計測と理論値が同じになった
(2ページ後)
写真では見にくいので、Excelでグラフを複製してみたのがこちら。
(目盛線は方眼紙とは一緒にしていない)
そのままコピペ法
このコピペ法は、実験手順の中で作成する図表に何を載せればよいかを記述した文章を、そのままキャプションにコピペすれば良いだけ。いたって簡単にもかかわらず減点されにくい。実験レポートでは非常に役立つ。
やり方は、3つの手順から成る。
1.まず実験手順の文章を見る。
三相インバータを用いて出力周波数を変化させ、誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係を調べ、表・グラフにまとめよ。(以下省略)
2.次に、この文章からグラフにまとめる内容を見つける。文章を読むと、まとめるべきは
誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係
だと分かる。
3.この部分をそのままキャプションにコピペすれば良い。
図xx 誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係
たったこれだけ。
●●君のキャプション
●●君作のキャプションは
「図6 モータ回転数と駆動周波数の関係」。
コピペキャプション「誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係」と比べると、誘導電動機をモータ、周波数を駆動周波数と、単語がちょっと変化している。
が、「回転数」と「周波数」というキーワードはきちんと入っているし、言葉の順序も一緒。したがって、おそらくこの方法で作成したと思われる(本人に確認したわけではないので推測ではあるが)。
そして、このようなキャプションが書かれていれば、まったく問題なし。
注意点
ただしこのコピペ法には注意点がある。それは、コピペする文章が意味の通る文章であること。
つまり、文章がキャプションに適した表現になっていれば良いのだが、そうでない場合には実験内容が不明確だったり、キャプションが長くなったり、運が悪いと意味不明キャプションになって減点されることもあり得る。
例えば、上のコピペしたキャプション:「誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係」の場合、詳しく(?)考えると、実験手順が
- インパータの周波数を10Hz、20Hz…に設定したときの、IMの回転数を調べた
- IMの回転数を100rpm、200rpm…に設定した時、周波数がいくつになっているかを調べた
のどちらかは実は不明確。
まぁ、この程度の不明確レベルならば減点には滅多にならないが、もうちょっと意味不明の文章をコピペしたら、運が悪いときには減点になるかもしれない。
そんなときには、次の変化条件と測定項目をはっきりさせる方法でキャプションを作って欲しい。
変化条件と測定項目を明確に
変化条件と測定項目を見極める
今一度、実験手順の文章を眺めると…
三相インバータを用いて出力周波数を変化させ、誘導電動機(IM)の回転数と周波数の関係を調べ、表・グラフにまとめよ。(以下省略)
この文章から、
変化条件:三相インバータの出力周波数
測定項目:誘導電動機(IM)の回転数
はすぐに分かるだろう(自分で手を動かして実験やってたら、当然分かると思う)
これを見つけたら、次はどちらが設定(実験)条件で、どちらが測定項目かがはっきり分かるような文章にすれば良い。例えばこんな感じで。
キャプション:
三相インバータの出力周波数を変化させたときの誘導電動機IMの回転数
このように記述すれば、
- 実験で変化させた(設定した)のは、(インバータの出力)周波数
- 測定したのは、IMの回転数
が、誰でも理解できる。
その他の表現
この他の表現パターンとしては、”依存性“とか”特性“という単語を使ってもよい。
上のIMの回転数と周波数のグラフでは、こんな感じで言い換えができる(ちょっと不自然かも)。
- 誘導電動機IM回転数のインバータ出力周波数依存性
- 誘導電動機(IM)のインバータ駆動周波数-回転数特性
もう少し分かりやすく、あなたも聞き馴染みのあるキャプションの例を挙げると、とある材料の抵抗が温度によって変化したり、オペアンプの増幅率が周波数によって変化するときには、それらを示すグラフには
・抵抗の温度依存性
・増幅率の周波数特性
といったキャプションを付けたりする。
例えば、次のグラフは電気電子系学生には馴染みのある nチャンネル MOSFETのオン抵抗値を示したグラフ(TOSHIBA 2SK2313データシートより引用)。
横軸がケース温度[℃]、縦軸がオン抵抗[mΩ]で、ケース温度が高くなるに従い、オン抵抗が高くなるという、温度依存性、温度特性が示されている。
ではここでちょっと練習。このグラフにあなたならどんなキャプションをつける?
実験内容がより理解できる
レポート採点してみると、数名の学生さんはキャプションに”無負荷”という言葉を入れていた。
実はこの実験、実験手順を記した文章には書かれていないが、IMに負荷をかけない状態で回転数を測定するもの。
そこで、グラフに”無負荷”という言葉が記述されていると、読む人は「あ、この実験はモータに負荷を与えなかったときの実験結果なんだ」と分かる。
したがって、”無負荷”のような言葉を追加することは、グラフ・表の理想像「手順を読まなくても、実験内容が想像できる」に近づく。これは加点対象になる。
さて、”無負荷”の入れ方は複数思いつくが、例えばこんな感じ。
- 三相インバータの出力周波数を変化させたときの無負荷時における誘導電動機IMの回転数
- 三相インバータの出力周波数を変化させたときの誘導電動機IMの回転数(無負荷時)
英語論文では”( )”は使いにくいが、日本語で書く実験レポート、卒論・修論ならば、”( )”を使っても問題ない。
まとめ
キャプションを付けるときのやり方は、あなたの目標レベルによって3つくらいに分けれる。
- 簡単&減点されにくい → そのままコピペ
- 減点されない → 変化条件と測定項目を明確に
- 目指せ!プラス評価 → 実験内容・条件が理解できる
まずは、そのままコピペ法をマスターし、卒論を書き始めるまでには2の変化条件と測定項目を明確に表現するキャプションを書けれるようになるのをお薦めする。
4つのコツ
- キャプション(図表の見出し)(この記事)
- 軸タイトルと目盛り(作成中)
- 凡例(作成中)
- 図表番号の呼び出し(作成中)
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